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「泥の中 泥の花」
どろのはな
どろのはなの蓮の花が
どろのなかで
咲いている
ダンマが
こんなところで
美しく咲いている
どろのはなは
どろのなかにしか
根も茎ものばせない
どろどろの
どろを吸ってしか
白いプンダリーカを
白く咲かせているどろ
赤いパトナを
赤く咲かせているどろ
*
ダンマは法のこと。仏の説く法のこと。
真理のこと。真理の法則のこと。
存在するすべてを統べるきまりのこと。法の実在。
プンダリーカは白い蓮の花のサンスクリット語。
パトナは赤い蓮のサンスクリット語。
*
佐賀平野に稲田が茂る。ここ神埼にはクリーク公園がある。
夏、そこへ行く。蓮の花が咲いている。
稲田の真ん中に平城がある。廃墟の姉川城の、周囲は壕である。
壕には蓮が埋め尽くしている。馥郁とした香りが流れてきて、
僕をただずませる。
小さい頃、父の自転車の後ろの席にまたがって、
蓮の花と蓮のみを摘みに行った。
明日がお盆というときだった。夕方の風が吹いていた。
汗に濡れていた父のシャツが風で乾いた。
稲田の続く細い道。ときどき後ろを振り向いて、
父が「落ちるんじゃないぞ」と叫んだ。
片手に収穫を抱き締めて、僕は自転車に揺れた。
蓮の匂いと背中の父の匂いをかぎながら。
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